最近流行りのLiFePO4(リン酸鉄リチウム)バッテリーの市場において、低価格を武器に日本での知名度を上げたショーライバッテリーを分解しました。

 ドナーはほぼ新品(笑)のLFX09L2-BS12。

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 ネジなどは見当たらないのでノコギリで適当に当たりをつけてギコギコと・・・

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 なにやら青い物体が・・・

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 基盤は単なる端子を固定するためのステーにすぎません。電子部品というべき要素はなし。(この端子には専用充電器がつながれます)

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 さらにケースを縦に2分割して中身を取り出します。上の青い物体はケースの底に両面テープで固定されているだけでした。

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 青く見えた部分はビニールシールで、剥ぐと本陣、LiFePO4のセルが見えて出てきます。

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 基盤らしきものも見えて、ようやくそれらしくなり、ちょっとワクワクしてきます。

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 セルは簡単に基板から引きちぎることができました。先端に見える2つの薄い金属片が極板で基盤に接続されています。セルは手で曲げられる程度の柔らかさで、それを薄いアルミシートでパックしてあります。

 セルのアルミシートを破くことは、予測できない周囲の環境への影響を鑑みて行いませんでした。

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 基盤にはこんな感じで接続されています。

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 基盤を真っ二つに割った・・・わけではなく、2枚の基板で構成されていて、1枚の基板に4つのセルをぶら下げています。

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 1枚のセルの端子間電圧を測定してみると、約3.2V。これをひとつの基板に4枚直列して12.8V。今回分解したバッテリーでは、その基盤を2枚並列にして容量を稼いでいました。
 これより大きなバッテリーでは、基盤を1枚づつ増やしてあるのでしょう、きっと。(あるいはセルが大きくなっているのか・・・)

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 これが基盤。この基盤もなんらかの電子部品がついているわけではなく、単にバッテリーセルを固定しておくためだけのものでした。

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 各セルには製造番号らしきものがプリントされている。下4桁は完全な連番ではないが、わりと近い数字。

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RCE(台湾)が作成した比較表
”US S工場”はいわずとしれたショーライバッテリー

 ショーライバッテリーについては、疑問のあるセルの品質、およびバランス充電に適応した回路がついていないことを指摘。

アンチグラビティーの販売業者が作成したショーライとの比較表

 アンチグラビティーはRCEと同じく、自社バッテリーのセルはA123システム社製であることを誇示し、ショーライのセルは、得体のしれない中国製、低品質、安モノとこき下ろしています。ただ皮肉なことに、日本においてはアンチグラビティーとショーライは同じ代理店が扱っています。

 上でエラい持ち上げられようのA123システムズ製セルですが、その製造元であるA123システムズが現在、経営危機状態にあるということです。まあ、仮にA123が倒産するにしても、まともなLiFePO4セルが市場からなくなってしまうのではなく、誰かが跡を継ぐことになるのでしょう。

2010年1月15日

http://auto-affairs.com/news/1001/100115-1.html

フィスカーがA123の電池を選択、エナーデルとの契約解除

 米国の電池メーカー、A123システムズは14日、電気自動車(EV)メーカーのフィスカー・オートモーティブとリチウムイオン電池の供給契約を締結したと発表した。フィスカーは昨年5月に電池メーカーのエナーデルと予備契約を交わしていたが、エナーデルの製造スケジュールでは間に合わないとして、A123製電池の採用を決めた。

(中略)

■フィスカーに2300万ドルを出資

A123はまた、フィスカーに対し2300万米ドルを出資すると明らかにした。フィスカーは政府から5億2800万米ドルの補助金を受け取ることになっているが、実際に交付されるには、デラウェア州にあるゼネラル・モーターズ(GM)の工場をフィスカーが買収することが条件になっている。この買収を成立させるための資金の一部としてフィスカーの出資が必要になったもようだ。
(後略)

2011年12月26日

http://response.jp/article/2011/12/26/167624.html

フィスカーのPHVスポーツ、カルマ…バッテリーに不具合

米フィスカー社の4ドアPHVスポーツカー、『カルマ』にバッテリーの不具合があることが判明した。

これは23日、カルマのバッテリー製造元、A123システムズのデイビッド・ビューCEOが、顧客や取引先、株主に宛てた文書で明らかにしたもの。この文書によれば、カルマのバッテリー冷却システムに不具合があり、冷却液が漏れて最悪の場合、電気系がショートする可能性があるという。

A123システムズは、「直ちに危険といえる状態ではない」としながらも、フィスカー社と連携して、2011年7月から納車がスタートした約50台のカルマについて顧客と連絡を取り、不具合を修理する方針だ。

2012年4月27日

http://www.astem.or.jp/kyo-nano/memo/no-297.htm

ナノテクベンチャーのエースA123社に存亡の危機

A123 Systems(以下A123社)はマサチューセッツ工科大学のNanophosphate技術を導入して2001年に創業したベンチャー企業です。ボストン郊外のウォルサム市に本社を構え、リチウムイオン電池とエネルギー貯蔵システムの開発と製造を行っています。従業員総数は全世界で2000名を数えるので、その急成長ぶりが窺えます。
(中略)

電極にリン酸鉄リチウムを用いたA123社の電池は、安全性が高い上に急速充電が可能であるなどが謳い文句で、フィスカー社の4ドアスポーツカーのカルマに採用されるほか、ゼネラルモーターズ社に複数の車種のバッテリーとして供給する契約も成立しています。
昨年くらいまでは順風満帆でミシガン州のデトロイト市に近いリボニアという場所に工場を建てて自動車用のバッテリーの量産を始めていました。ところが、A123社のバッテリーを搭載したフィスカー・カルマが問題を起こしました。
Consumer Reportsは、カルマは予備テストの段階で簡単にブレークダウンした。
その原因はバッテリーの欠陥であったと報告しています。

その後A123社は、バッテリーの欠陥が、リボニアの工場の溶接機のキャリブレーションミスに起因することをつきとめました。配線のわずかなずれにより、セルをバッテリーパックの中に詰め合わせたときにショートをおこすことが分かったのです。
リボニアの工場には4台の溶接機がありますが、問題があったのは1台だけだったそうです。しかし、バッテリーパックの中には何百ものセルを詰め込んだものもあり、その一部が欠陥セルだとバッテリーパック全体が欠陥品になります。A123社CEOの「事実上この工場のすべての製品がeffectively contaminated by this particular defect(この特定の欠陥で効果的に汚染してしまった)」という言葉は企業トップとしての悔しさをにじませています。
結局、A123社は不良品の回収のために5500万ドルを見込んでいますが、同社の2011年の収入が1億3900万ドルであることを考えると会社は存亡の危機に面していると言えます。

(後略)

[2012/08/18 追記]

2012年8月17日

http://jp.autoblog.com/2012/08/17/fisker-flambe-second-karma-spontaneously-combusts-w-video/

 フィスカー・カルマの自然発火事故が起きているようですね。カルマはアルミボディなので、火災でボディは完全に溶けてしまいます・・・

 記事によると、『販売台数が約1,000台というカルマが、ここ4か月の間に2台も火災事故を起こしている』とのこと。今後数が増えるかもしれませんが、今のところの確率は 4/1,000=0.4%。ガソリンエンジンの場合、600/250,000,000=0.00024% ということで、約1700倍の確率で発生しています。

 出火場所はバッテリーのあるフロアパンからではなく、モーター付近からのようですが・・・

[2012/10/19 追記]

 A123システムズ、ついにつぶれちゃいましたね。しかも身売り先に中国企業と交渉索していたとは・・・

2012年10月16日

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MBZLLJ6KLVTV01.html

電気自動車向け電池メーカー米A123システムズが破産申請

10月16日(ブルームバーグ):電気自動車向けリチウムイオン電池メーカー、米A123システムズ は、連邦破産法11条に基づく会社更生手続きの適用を申請した。連邦政府から2億4910万ドル(約196億円)の補助金を受けている同社は、自動車関連事業の資産を米ジョンソン・コントロールズ に売却すると発表した。

同社の破産申請により、代替エネルギー・運輸事業への米政府の資金提供をめぐる議論が激化する可能性がある。太陽光パネルメーカーのソリンドラは、米エネルギー省から5億3500万ドルの融資保証を受けてから2年後の2011年9月、破産法の適用を申請した。これを受け、A123やフィスカー・オートモーティブ、テスラ・モーターズへの米連邦政府からの補助金や融資も、共和党議員の精査の対象となっている。

A123の発表によると、ジョンソン・コントロールズ はA123の自動車関連事業の資産を1億2500万ドルで取得することを計画しているほか、A123の事業の支援に向け7250万ドルの資金を提供する。A123は、過半数株式を中国企業に売却する試みが頓挫したことも明らかにした。