7月12日、日本の自動車系ニュースサイトの多くで、『ハーレーダビッドソンがMVアグスタ&カジバを買収』のニュースが報じられました。

http://www.google.co.jp/search?sourceid=navclient&hl=ja&ie=UTF-8&rlz=1T4GFRC_jaJP203JP203&q=%e3%83%8f%e3%83%bc%e3%83%ac%e3%83%bc%e3%83%80%e3%83%93%e3%83%83%e3%83%89%e3%82%bd%e3%83%b3%e3%80%80MV%e3%82%a2%e3%82%b0%e3%82%b9%e3%82%bf%e3%80%80%e8%b2%b7%e5%8f%8e

 どこのニュースサイトでも、イタリア在住の自動車評論家である大矢アキオ氏の配信を使っているようですが、氏の記事は、各社の歴史、キーパーソンの動向など、うまく網羅されています。


(以下、引用)
ハーレー・ダビッドソンは11日、イタリアの2輪メーカー、MVアグスタ・グループ(MVAG)を買収することで同社と合意したと発表した。これによってMVアグスタ・ブランドのほか、同グループ内のカジバ・ブランドもハーレー傘下に入る

ハーレーはMVAGの全株式を7000万ユーロ(1億0900万ドル)で取得し、4500万ユーロ(700万ドル)の負債も引き受ける。ただし現在MVAG株式の95%を所有するクラウディオ・カスティリオーニ会長は留任する。同様に、開発責任者のマッシモ・タンブリーニもスポーツモデル部門のチーフとして留まる。

ハーレーは今回の買収で、MVアグスタおよびカジバの販売建て直しを図ると同時に、ハーレーダビッドソン・ブランドの欧州市場における拡販の足がかりとする。

MVアグスタは1907年、ジョヴァンニ・アグスタによって北部ヴァレーゼに設立された航空機メーカーに起源を遡る。第二次大戦後に航空機生産が禁止されたのを機に2輪に進出した。やがて1950 – 70年代にかけて市販・レース用ともに数々の名作を送りだしたものの、1980年に倒産した。

いっぽうカジバは、同じヴァレーゼで1950年に金属メーカーとして誕生した。CAGIVAとは創立者のCastiglioni GiovanniとVareseの頭文字を組み合わせたもの。1978年、2輪製造に進出。1992年にMVアグスタの商標権を取得し、より歴史の長い同ブランドを表面に打ち出したMVAGを形成した。

MVAGは昨2007年に全世界で5819台を販売したが、今年に入って急速に販売が伸び悩み、経営不振に陥っていた。

ちなみにイタリアのオートバイ市場でも、国産車は苦戦している。イタリア運輸省によれば、昨年の原付を除く国内2輪登録台数43万5959台のうちイタリア製は僅か46%。残りは輸入車で、そのトップ10を日本の4メーカーが占める。

そのような状況から、今回の買収は「市場における対日本車同盟である」とする見方が早くも出ている。 
(引用終わり)


  ただ、このニュースには大事な事実が書かれていません。

 それはズバリ、ハーレーがこのイタリアン・メーカーを買収するのは、実質、2度目である、ということです。

 現在のMVアグスタは実質、カジバであり(ニュースにもある通り、MVアグスタの商標を取得したカジバは、よりネームバリューの高い方に名前を替えてしまったのです)、ここが重要なのですが、カジバの前身は、ハーレー・ダビッドソン・アエルマッキなのです。

 ハーレー・ダビッドソン・アエルマッキは、1960年、ハーレー・ダビッドソンが、ヨーロッパへの進出の足がかりおよび商品ラインアップの拡充を画策し、名門アエルマッキを買収することで成立しました。(1974年、完全子会社化)

 アエルマッキ製の小~中排気量のオートバイは、ハーレーのブランドを付けられて米国で販売されたりしていましたが、思ったような成功は得られず、1978年には、ハーレー・ダビッドソン・アエルマッキは、カジバに売却されてしまいます。

 カジバのボス、カスティリオーニ兄弟は、プライベートでGPチームを所有していましたが、そのチームのテコ入れ策として、アエルマッキのGPチームを手に入れるべく、会社を製造部門やら何やらも含め、丸ごと買った、と言われています。

 とはいえ、成功した実業家であるカスティリオーニは抜かりなく、アエルマッキを母体に、その後、ドゥカティ、ハスクバーナ、モト・モリーニなどを買い足していくことで、一大モーターサイクル帝国を築き上げていくのでした。

 ということで、MVアグスタの買収は、ハーレーにとって、『2度目の正直』なのです。果たしてどうなることやら。